仮面福祉会

できることを切り売りしています

思慮深いふりをする国と、逆の人

駅のホームで、乗らない電車を見送る。たまたま最後尾に立っていて、車掌さんが安全確認の呪文を唱えているのが聞こえる。そして、扉から半身が出た状態で出発するのに、ちょっと驚いてしまった。知っていることなのに。

 

絶対のタスクがないので、ずっと懸念だった雑務を片付ける。過去にやった作業を出力していくのだが、数字が物理的な量になってゆくのが恐ろしい。いや、増えることよりも紙がぐんぐん消費されていくのが怖い。そして「印刷」という行為を何年何回とやっているのに、絶対に間違えて無駄を作ってしまう。これこそAIが私の意図を汲み取って臨機応変にやってくれたらいいのに。手塚大先生の作品を捏造したり、既にいない歌手を騙って変な歌を歌わせるのではなく。

 

昼休みに本部に行くと、3年ぶりぐらいで以前お世話になった先輩に会った。エレベーターを降りるまでの間に「最近のブームは何?」と、アイドルに訊くような質問をされ「かき氷です」と答え、別れた。このあと先輩のいる部署で、この情報が共有される様子を想像する。

それにしても、常に何かしらのブームがあるという前提の問いは、誰にでも成立するのだろうか。先輩にもブームがあるのかな。ていうか今も100の質問でマイブームを訊く、みたいな文化あるんだろうか。ちょっと死語っぽい。

 

夜のテレビで、神器ぐらいの価値がある香木の話を見る。聞けば聞くほど価値というもののわけのわからなさが畳みかけてきて、全員、化かされて握らされた葉っぱの小判の前で、神妙な顔をしている人々のようにも見える。こういう木とか象牙とか宝石とか文化遺産とか、かつて中世ヨーロッパなどが儲けようと荒らすだけ荒らした結晶として闇の深い話である。しかし現に残り存在している意味不明な文化は、平和裏に行われるなら、世界の豊かさを示すことだから残ってほしい。

織田信長が2かけ切り取ったというエピソードに、むしろ全部持っていかなかったのが、意外と思慮深いなと思った。