仮面福祉会

できることを切り売りしています

これは私の物ではない

旅土産にと、母からハンカチをもらった。京都っぽいモチーフがプリントされた、ピンクベースの可愛らしいものである。

私は、好みでないものを僅かでも身に着けるのが嫌で、対象は下着の飾りから、化粧品のパッケージカラーに至る。その、緩衝地帯として許しているのが、ハンカチである。ハンカチは圧倒的に人から貰うもので、ほとんど「私の物ではない」から。実際、いま使っているハンカチは全部いただきもので、自分では絶対買わない、可愛らしいものばかりなのがいっそ面白い。気に入ったものを買う欲を満たした後に、残る痕跡の見本市である。

 

私が羽田空港にたどり着けなかった一方で、両親は火災により、行きの新幹線内で足止めされていたそうだ。今日の電車も初めから遅れているし、何かが起きているのではと思ってしまうが多分、何もない。

しかし帰りも人身事故である。

視界の悪い前髪を切るため、ついに商店街の安いカット屋さんに行く決意を固め早く帰ったのに。間に合うだろうかと勝手にやきもきする。車内アナウンスで、電車は動いていますが本数が少なくなっていますので、ご注意ください。と繰り返される。注意とは。

混み合う電車で最寄駅にたどり着き、駆けつけたのが閉店一分前であった。もうおしまいですよねと覗き込むと、いいですよーと言って受け入れてくれた。この手の店はただ平等に切るだけだと思っていたのに、前髪を切るのにあれこれ細かいことを訊かれて意外だ。1.5センチ切ってくださいというリクエストしか用意してなかったから、逆に戸惑う。サービスの安売りは心配だが、持ってる技術を発揮できないのもストレスなのかもな。

 

開けた視界に満足していたが、両親にはそれでも長いと言われる。