仮面福祉会

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足で稼ぐ北斎

夜9時頃に寝て、3時間おきぐらいに目覚めつつ朝を迎える。共有スペースがどうも汚く、宿を使う人々の若さを実感する。フリードリンクがうたわれていたが、食器を洗うスペースがなく、よって使えるコップがなくなっており、なるほど、と思う。大分早い時間に荷物をまとめて、出た。

 

私鉄の暗い駅に降りてドキドキする。生まれて間もない頃から数年長野に暮らしていた時期があったが、その頃から変わっていないだろう雰囲気がある。

地上に出てごとごとと駅に停まるたび、降りた人々が運転手さんに定期券を見せて通りすぎていく。そういうシステムなのか。電車が出る前に先頭まで行かないといけないの、ちょっと焦るな。

と思いきや、降りた小布施駅は切符確認がそもそもなかった。

 

人気のない町中、岩松院まで歩く。日差しは強いが、こころなし涼しく不快感は少ない。果物が成る木々の間を、ひたすらにまっすぐ進んでゆく。

ちょうど良い時間に到着し、北斎の書いた天井絵を眺めた。鳳凰は首もとが松のようになっており、羽は孔雀のそれ。色が鮮やかで古さを感じないが、目付きに時代を感じる。ドラえもんのアニメ絵を受け入れがたく感じたのは、メガネオフのび太の目が3じゃなくなったからだ。目の描き方にはそういう力がある。

職員さんの解説が20分おきぐらいに設定されていたが、あとの時間が団体予約で埋まっていて文字に活気を見いだす。早く来ておいて良かった。

それからまたぼちぼち歩き、北斎館へ。母の知り合いから今日までのチケットを2枚もらっていたので、その辺の人に1枚あげた。魚の絵の企画展であったが、鯨とか、哺乳類に近付くにつれまた目付きが変わって描かれているのが面白い。

北斎館の目玉とも言える山車の絵が、長野県立美術館に貸出中とのとこでお目にかかれない。迷ったが、乗りかかった船だなと決め、小布施を引き上げ美術館に向かった。ものすごい北斎ファンみたいである。

 

県立美術館に着くと、まず山車がばーんと展示してある。そして女浪の絵が宇宙のようで吸い込まれそう。しかし、男浪が、ないな。どうやら前期と後期それぞれ展示らしくそんなご縁がないことあんのかよ。

しょんぼりしつつ、その他の展示も眺めた。見たことのない絵がことごとく小さく、自ずと歩みが鈍く人々が集まるなかを縫った。

 

美術館を出て、賑わう善光寺はでかくて立派な建物がたくさんあって楽しい。門の阿吽像の、足に血管が浮き出るほどの表現が好きでなめるように見る。

食べるものを決めるのが苦手すぎて、歩く間に目についたものをえいやと食べていく。結果、ジェラート4種とおやきとかき氷を昼食とみなし、めちゃくちゃにも程があろう。

 

気付いたら新幹線ギリギリになってしまい、善光寺から坂を小走りで下る。土産は北斎館で買ったから大丈夫、と店にも寄らず帰路についたが、改めてちゃんと見たら落雁であった。職場に配るには渋すぎだろう。