仮面福祉会

できることを切り売りしています

勝手に被れ

痛いブーツはもう痛くない。勝った。

 

電車で隣に立つ人が、鞄を地面に起き、乗り降りが起こるごとに足でずるずると引き摺っている。主に高校生がやりがちなこの所作は、置き去りになりそうだし鞄が真っ黒になりそうだし、一向に理解ができないもののひとつだ。

とか、この駅でごっそり高校生がいなくなるなとか、ぼんやり観察をしながら三島由紀夫を読み進めている。豊穣の海、一巻より二巻の方がだいぶ気楽に読めるのが、多分女の話が少ないからで、自分の偏向ぶりに気付く。

 

月に1度の業者からの報告会で、約束が果たされない事件について説明を求める。なるたけクローズドクエッションにしているのに、はい、いいえすら出てこず、ごにょごにょ口のなかで何かを捏ね回される。以前読んだ森博嗣のエッセイで、ただ「何故か」を訊いてるのに責められていると思われ、恐れられ結局説明がされない、ようなことが書いてあった気がするが、それである。もう決まっている事実なのに、言いにくそうにしてる時間がもったいない。

とりあえず腹から声出してみようか、みたいな、部活の先輩みたいなことを言いそうになるのすら耐えた。

 

箱で買ったマスクがもうそろそろなくなる。マスクを買う生活はいつまで続くのだろうとうんざりして、カゴに入れたままアプリを閉じた。