仮面福祉会

できることを切り売りしています

私の影を見ている

最近の朝のBSは、世界の街歩き。ヨーロッパのイメージの強い番組だが、アジアに入ってきている。

テイストは一貫しているが、訪れるのは草原や農村から出稼ぎで都会に来た人びとの住みかなどで、清貧、と言えば良いのか、ヒリヒリするような生活の匂いとBGMの長閑さのちぐはぐぶりがすごい。ビル群の外に広がるゲル街とか、家族に嘘ついてカジノで300万使い切ろうとしてる人とかを写し、「早く子どもと住めるようになるといいですね」とか「みんな人懐こいなぁ」などとナレーションが入るのに、いやいやいや、と心の中でツッコミを入れたくなる。

 

出張のためジャケットを着て、一億年ぶりにスカートをはいた。全体的に有り合わせ感があるうえに気候のせいでも悩ましく、時間ギリギリまでシャツをとっかえひっかえした。社会人なのだから何セットか持っておけばいいのに、と毎回思っては喉元を過ごしてしまう。

出張先は、高校生の頃毎日通り過ぎていた駅なのだが、八百屋やケーキ屋が並ぶような狭い商店街に初めて入り、こんな生活感があったのかと驚いた。途中、学校の先生と保護者らしき人が立ち話をしたりしていて、昔からの知り合いの知らない一面を見たようで戸惑う。三丁目の夕日みたいだ。

関係者と笑いながら苦しい話をして呆然としながら職場へ戻った。

 

残業をし、帰路につき、駅に着くとおじさんが立ち止まりスマホを掲げている。それで、皆既月食のことを思い出した。見上げるとすぐに月が暗い。あまりにてらいなく月食なのでただ、なるほど、と納得してしまった。あの影は私で、私の影を見ている、と考えると、どこに立っているのかわからない、ぞわぞわした心地になる。

月食を写真にしようとする人は、道の真ん中でとまりがちで何でなんだ。気持ちを囚われすぎているのでは。

帰宅するとちょうど、天王星が月の脇から出てくるところがテレビでやっていた。めちゃめちゃに粒で、笑った。