仮面福祉会

できることを切り売りしています

他人の本道に脇道としてお邪魔しました

最初で最後の本番の日である。

電車が大胆に遅れている。
朝早くの事故でここまでしっかり影響を被るの久しぶりだし、久しぶりが今日かよとげっそりする。
1度家に戻り反対側にある別の駅まで行き、現場に向かった。朝からひと仕事である。

ゲネとやらをやり、また信じられないような間違いを犯す。
自分の出る以外の演目が段々に出来上がってゆく様子は面白いが、完成版を予備知識なく見る客の立場のほうが楽しいものだなと知る。プロのダンサーが30分踊り続けるのを見て、舞台裏の修行のほどを想像する。私みたいな素人が同じ舞台でペロペロ踊って恐縮である。
本番以外ともかく待ち時間が多い。この間に仕事ができたらなとか思い始めるぐらいただ、ぼんやりしていた。暇なので自然メンバーと喋るが、不快に思われないコミュニケーションの間合いをずっと図っていた。人との仲を暖めてゆくことは何歳になっても自分が自分である限りとても難しい。
公演は、最後になってようやく何となくまとめられたらしく、どうやら無事に終わる。

出演者などプロのみなさんが親切にもあれこれ声をかけてくださるが、共通項がなさすぎて自分の素性の話が全く通じないのがわかっていてすまない。自然、謎の人としてそこにいて去ってゆくことになり、このままみんなの記憶からなくなることを願う。願うが、つい、今日会った人々が何か困ったときに、役に立つかもしれない私の武器を、知っておいてもらえば良かったかと振り返ってしまう。そんな武器は存在しないので、ただの私欲であり、みなさんに金を落とし続けられるように仕事をがんばることがおそらく、一番望まれていることだ。