仮面福祉会

できることを切り売りしています

本当に強い人はいい人

ホームヘルパーの仕事で、90代のおじいさんのお家に通っていたことがある。そのお家には長く付き合いがあるお医者さんとか看護士さんがいて、あとから入った自分たち訪問介護事業所の者どもはどうも口出しができるような雰囲気ではなかった。
確かそのおじいさんは熱中症で入院して足腰弱っちゃったみたいな感じだったので、基本的にはわりかししっかりしている人だった。だから介護の視点からすると、できることから体を動かしていって、元の生活に戻れるように手助けをしたいところであった。
しかし家族としては、1人でお手洗いとか行って転んで骨折でもしたら、とかそういう心配をする。更に、本人はオムツが気持ち悪くて自分で脱ごうとしたりするんだけど、家族としてはそれは汚いからやめてほしい。
そういう家族からの訴えを受けて、知らないところでお医者さん側が色んなものを手配してきて、1日30分とかしか関わらないヘルパーの自分は、本意ではない方へコロコロと転がっていくのを、黙って見ていた。

家族としては、医者にしてもらったことはありがたかったんだろうけど、本人の気持ちを考えると、そうとも言えないんじゃないかと思って、かなしかった。更に、家族は決して悪気がなくて、本当にそれが良いと思ってそうしてることがわかったし、家族も本人も、いつもヘルパーの自分にお礼を言ってくれるのがつらかった。
ちなみにそのおじいさんは関わってる期間中に亡くなったんだけど、何でだったかは忘れた。でも多分、家族は医者に感謝をしているし、関係は続いている。

正直この時、ケアマネージャーがちゃんと意見を言っていたのかとか、どういうケアプランを立てていたのかとかわかっていなかったので、医療側の意見が知らないうちに通っていた経緯はよくわからないし、介護側にももっとできることがあったんじゃないかと思う。
でも、最終的な決定をする家族のことを考えたら、命を握っている医療よりも介護が弱い、というのはあるんじゃないかなと感じている(主観)。だから、医療側からこちらに意識的に歩み寄ってもらわないと難しいと思う。今はもう少し、チームケアができる土壌が育ってるだろうか。
医療現場はたくさんしんどいことがあるだろうし、専門知識や技術も介護の比じゃないこととか、絶対自分は医者になれないこととかもう腹を見せて認めるところなので、賢者の余裕というのを見せてほしい。