仮面福祉会

できることを切り売りしています

そうか、芸術は買えるのか

私が書道を教わっていた先生は50歳そこそこで急に亡くなってしまったのだが、その先輩である偉い先生が百貨店で個展をされるというので、母と待ち合わせて見に行った。
大きさも書体も様々な作品が並び、どれもかっこいい。2畳分ぐらいの作品を見て、こんなものをバーンと飾ってそれに合う部屋にしていったら面白かろうなと妄想した。妄想したあとに、展示作品は全て完売しているという話を聞いた。まじか。

会場にいた知り合いの先生と話していたら、見たことがある人が向こうを横切ってぎょっとした。そんな馬鹿なと慌てたが、隣りの会場で別の個展をやっていたのが学校の先輩だったのだ。
先輩は漆の作家で、実用品は作らない、まるままの芸術家だ。作品についての話を聞いたら大変奥深くものすごくて感動した。小中高と同じルートだったので、こういう現在があり得るということがとても不思議だ。
作品は、たまたま隣り合わせただけだが、書道の作品に立体感と質感が加わったような感じがしてとても好きだなと思った。

それにしても、こんなことってあるのか。の連続であった。

半分義理であったが来てよかったなぁとしみじみ思いながら帰りがけ母と呉服売り場などを冷やかす。友禅の着物などを見て、先ほどの作品といいこの着物といい、買う人がいなかったら作家はいなくなるんだよなと寂しくなる。
歌舞伎もそうだが、生活の役には立たないが、いいなぁ素敵だなぁと眺めるだけで満足するようなものが存在していてほしい。世の中のお金持ちはちゃんと、役に立たなそうに見えるものにもお金を使ってくれているだろうか。

だが考えてみたら、そこにお金を使うのかどうかというだけで、絶対に買えないわけじゃない。
いつか実家の部屋を空けて、オブジェをひとつ買って書と一緒に飾ろう。