仮面福祉会

できることを切り売りしています

鴨長明は程遠く

舞台などで見る、江戸時代以前の庶民の生活感に憧れている。
少ない着物を小さくしたり大きくしたり仕立て直し足りあれこれ組み合わせたり、狭い部屋を衝立でしきったり、物を持ち歩くのに懐や袂や帯を使い倒したり、持っているものを最大限上手に使い回しているように見える。

極端に言えば、いつでも風呂敷包みひとつでいなくなれるようにしておきたい。しかし例に漏れず捨てるのが苦手なので、根本的に物を増やしたくない。
見た目は良くても「使えない」「消費されない」ものを買いたくないのはもちろん、写真を撮ってデータを増やすことも嫌だ。旅行やイベントなどに行くと、その気持ちといつも葛藤してしまう。結局歌舞伎の筋書を買うのをやめられず捨てられもせず、たまる一方で恐れおののいている。

どこかで「記念に何かを残すというのは、楽しかったことを覚えておくため」というのを読んで、それもそうだと感心した。何ら実用性のないマグネットなどを買って、冷蔵庫に貼ってあるのを見てこれはあの旅行だなとか、あの時こんなことがあったねとか思い出すんだろう。それはいとおしいことだ。

物を増やさないなんてこと、できないのはもうわかっている。だから、どこかに「記念」をまとめておいて、心置きなく増やすだけ増やして、死にそうになったらばーんと焼いてしまうぐらいの思い切りを持ちたい。